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夫婦外ストレスとその対処について

夫婦間ストレス対処トレーニング(CCET)では、夫婦外ストレスと夫婦内ストレスを分けて考えます。

夫婦外ストレスというのは、夫婦の外で起きるストレスで、夫の残業や隣人の騒音などがこれにあたります。

少し古いですが、航空管制官を対象にした研究がとても有名です。(1)

この研究では航空管制官として働く男性とその妻を対象にしています。航空管制官の仕事量は、当日の離着陸の本数と視界の悪さによって、仕事の大変さを客観的に測定することが出来ます。

離着陸の本数が多くて、視界も悪いと、仕事はかなり大変だったと言えます。こういう仕事が大変だった日は、帰宅してから妻と会話する回数が少なくなり、接触頻度が減る、ということが夫婦の報告から示されています。(1)

このように、仕事の出来事は、夫婦関係とは全く関係無いのですが、そこでの出来事が夫婦のやりとりにも影響してしまう、という好例です。

こういった仕事での否定的な出来事が家庭での否定的な出来事と関連する、というのはどのような職種でもあります。これらはwork-family spilloverとして広く研究されています。(2)

さて、やりとりの乏しさは、夫の個人的観点からすれば、一人で落ち着く時間を持つ、ということなのでしょうが、妻の視点からすれば、夫婦間での会話を避けている、ということになり、夫婦間コーピングとしては望ましくありません。

妻は夫よりも夫婦間の会話を重視しているので(3)、夫婦間の会話の乏しさは妻の夫婦関係満足度を低くさせてしまいかねません。

この場合は、夫側が「実は仕事がきつくて、ちょっと休ませてもらっていい」と予め一言伝えておくことが重要です。この一言があると、妻は「夫がやりとりを避けているのは仕事で疲れているから」という認識が出来ます。

逆にこの一言が無いと、「昨夜のやりとりで何か気に障ることがあったのかな」という考えが起きてしまい、「夫がやりとりを避けているのは私が気に触ることを言ったから」という誤った認識に陥ってしまう可能性もあります。

夫婦外でのストレスは基本的に外で対処してくるのですが、それでもやはり夫婦内で持ち込まれてしまうことは多々あります。その際は、それが外から来たものであることをきちんと相手に伝えておくことが大切です。

更に言えば、残業を強いるような環境というのは、個人だけでなく、夫婦関係にも悪影響を及ぼすと考えられるので、残業を強いる環境は社会全体で是正していく必要があると言えます。

夫婦内ストレスとその対処についてはまた別の機会に話します。

(1)Repetti, R. L. (1989). Effects of daily workload on subsequent behavior during marital interaction: the roles of social withdrawal and spouse support. Journal of personality and social psychology, 57(4), 651.

(2)Grzywacz, J. G., Almeida, D. M., & McDonald, D. A. (2002). Work–family spillover and daily reports of work and family stress in the adult labor force. Family relations, 51(1), 28-36.

(3)(Yokotani, K & Kurosawa, T.)「A Pilot Examination of Dyadic Coping Inventory among Japanese married couples」,(共著),『Psychologia』第58号,2015年,155-164ページ 査読有

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