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夫婦間ストレス対処について

 一般的にストレス対処というのは、個人水準で考えていることが多いです。例えば、ある男性が「今日は残業で疲れたから、ジムで汗を流して気分を変えよう」などと考えている場合です。この場合、ジムに行って気分が晴れたら、適切なストレス対処となります。

 さて、実はストレス対処には、夫婦(カップル)水準のものがあります。先ほどの男性が実は結婚していて、パートナーの女性と同居している、という設定を考えて見ましょう。そうすると、男性のジムに行く、というのは男性の中では適切なストレス対処なのですが、そのジムに行っている分、パートナーと接する時間は減ることになります。

 この男性がジムに行くことを全くパートナーに伝えていなければ、いつもよりも帰宅が遅いため、パートナーは心配になるかもしれません。また、パートナーの方で共有したいことがあった場合は、こういった遅い帰宅はパートナーの怒りを買うかもしれません。この場合、男性がパートナーに何も言わずにジムに行った対処は夫婦と言う水準で見た場合、不適切なストレス対処となってしまいます。

 こういった夫婦水準での不適切なストレス対処は、徐々に蓄積していき、夫婦関係を冷え込ませますし、離婚の要因にもなります。また、夫婦間の否定的な行動は子どもにも伝わり、子どもの問題行動にも影響を及ぼします(Zemp et al., 2014)。

 夫婦間のストレス対処には洋の東西を問わず、一般的に望ましい対処と望ましくない対処があることが指摘されています(Yokotani & Kurosawa, in press)。 先の例で言えば、パートナーに一言伝えておくことやいつもより遅くなる場合は、パートナーが「大切にされていない」と感じてしまうリスクがあるので、パートナーに「あなたのことを大切にしている」というメッセージを伝えることが良いと考えられています。

 チューリッヒ大学のGuy Bodenmann教授が開発したCouple Coping Enhancement Training (CCET)は動画を視聴するだけで夫婦関係が改善されることを示しており(Bodenmann et al., 2014)、日本人にも高い効果が期待されています。

 現在、Bodenmann教授の開発したものを私が日本語版にして公開中です。研究に参加して頂いた方は皆様見られますので、ご興味のある方は是非ご覧下さい。

http://japaneseccet.azurewebsites.net/

参考文献

Bodenmann, G., Hilpert, P., Nussbeck, F. W., & Bradbury, T. N. (2014). Enhancement of couples’ communication and dyadic coping by a self-directed approach: A randomized controlled trial. Journal of consulting and clinical psychology, 82(4), 580-591.

Yokotani, K & Kurosawa, T. A Pilot Examination of Dyadic Coping Inventory among Japanese married couples, Psychologia, in press.

Zemp, M., Merrilees, C. E., & Bodenmann, G. (2014). How Much Positivity Is Needed to Buffer the Impact of Parental Negativity on Children?. Family Relations, 63(5), 602-615.

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